サーモグラフィーの有効性
今回はミレニアの創傷ケアプログラム契約病院様からいただいたご質問を紹介させていただきます。
サーモグラフィーの有効性
Q1. サーモグラフィーは、創傷アセスメントとして使用されますか?
米国では、創傷ケアに限局してのサーモグラフィーの使用はされておりません。 スタンダードな計測機械もありませんし、保険会社からのReimbursement(保険点数)もございません。
最近の創傷ケア学会や、創傷ケア関連の学会誌(Wounds、Ostomy wound management)、その他の医学誌(Lancet、JAMA、New England Journal of Medicine)等を見ても、米国では、創傷ケアの診断ツールとして、一般的ではないようです。
Medlineの近年の医療文献においても、創傷とサーモグラフィーの関連性において、意義のある文献はございませんでした。
American College of Cardiology・American Heart AssociationのPAD (虚血下肢)治療のガイドラインでも、サーモグラフィーには言及されておりません。おそらく、室内外の温度や、患者の状態(食前・食後、喫煙後など)の変化によって、測定値が異なることにより、意義のある温度計測が困難なことによるものと考えられます。
Q2. 使用されているのならば、どのような活用法をしていますか?
米国のミレニア・ウンド・クリニックでは、建設関係者に使われている携帯の赤外線温度計を使用し、急性シャルコー足の診断と治療経過の記録とモニターをしています。
ご存知のように、急性シャルコー足病は蜂窩織炎や通風のように、赤く腫れ上がり、脈が強くなると同時に皮膚温度が上昇するという徴候があります。急性シャルコー足も、適切に除圧・歩行抑制やBisphosphonate静脈点滴で落ち着くと、高温の皮膚温度が正常値まで下がります。(写真左・中央:携帯赤外線温度計、右:急性シャルコー足のケース)
Q3. サーモグラフィーのアセスメントとして有効であるならば、血管系でしょうか?神経系でしょうか?
Case Western University病院(オハイオ州 Cleveland市)の神経科でRSD(Reflex Sympathetic Dystrophy)/CRPS(Complex Regional Pain Syndrome)の診断に試験的にサーモグラフィーと発汗センサーが使用されていました。やはり、血流のアセスメントより自律神経病変の判断に向いていると思われます。
<最後に>
もし日本で、サーモグラフィーが創傷ケア・創傷アセスメントに有効であるというエビデンスがありましたら是非活用していただき、データがとれるようでしたら、米国学会誌に出版されてはいかがでしょうか。 また、日本の状況で何かご存知のデータ等ございましたら、ご教授戴ければ幸いです。