創傷ケアケーススタディ:外傷性壊疽性膿皮症
壊疽性膿皮症は診断、治療が大変難しい症例です。
外傷から始まった壊疽性膿皮症のケーススタディを5件ご紹介します。
抄訳
慢性的壊疽性膿皮症は珍しい疾患で、誤診されることが多い。壊疽性膿皮症は病理の特徴が乏しく、臨床的に診断されることが多い。特に壊疽性膿皮症に関連する全身性疾患がない場合、診断が難しくなる。治療のミスや治療の遅れは患者のためにならない。これらの創傷の理想的な管理は壊疽性膿皮症が外傷から始まる事がある、という事を理解する必要がある。筆者は外傷から始まった5つのケーススタディーを紹介する。
壊疽性膿皮症は皮膚の珍しい壊疽で進行は急速であり、辺縁が紫色で痛みを伴う創傷である。創傷は蜂窩織炎で囲まれた膿疱で始まることが多く、特徴的な潰瘍に急速に変わることが多い。下肢に現れることが多いが、他の皮膚部分、粘膜に現れることもある。壊疽性膿皮症は全身性疾患と関連して現れることが多い。一番一般的な疾患は、腸疾患、関節炎、肝炎、骨髄炎、骨髄増殖性疾患である。さらに、壊疽性膿皮症は全身性疾患があるなしに関わらず、外傷と関連して起こることが多い。つまり外傷が起こった部分から創傷が始まるのである。壊疽性膿皮症の診断は除外によって行われるが、病因はわかっていない。組織病理の特徴によって、診断はできないが、生検は他の病気を排除することには役立つ。好中球性皮膚症として壊疽性膿皮症は真皮に好中球浸潤が顕著に見られる。誤診は珍しくない(10%にいたる)。不適切な治療で治療が害を及ぼす治療になる可能性がある。正しい治療としては全身性コルチコステロイド、又は免疫抑制薬が多く使われている。次の外傷性壊疽性膿皮症の5ケースは慢性創傷の診断において、外傷性の創傷を重要視する必要性を示唆している。外傷性壊疽性膿皮症を認識することによって、取り返しのつかない誤診を防ぐことができる。
ケース1
58歳男性 右下肢の創傷。ボートに乗っているときに起こった外傷。
治療経過:生検、サリドマイド100mg 1日2回、プレドニゾロン60g 1日1回、治癒の兆候が見られた時点でプレドニゾロンを2ヶ月にわたり、徐々に減量。
ケース2
86歳女性 アルツハイマー病。 右足首に3-4週間にわたる慢性創傷。創傷に打撲の跡がみられたため外傷が疑われた。
治療経過:セファドロキシル 500mg 1日2回、培養、プレドニゾロン 10mg 1日1回→プレドニゾロン 20mg 1日1回とメトトレキサート 5mg 週1回、コンプライアンスが悪かったため、メトトレキサートは中止。創傷がプレドニゾロンで改善したため、生検なし。創傷が治癒傾向になった時点でプレドニゾロンを徐々に減量。
ケース3
40歳女性 脛骨骨折と左脚の創傷。蜂窩織炎
治療経過:蜂窩織炎は抗生剤で改善。生検、プレドニゾロン 60mg 1日1回を2週間。プレドニゾロンを徐々に減らしたところ創傷が悪化。プレドニゾロンを80mg1日1回に増量。創傷が治癒した時点から、プレドニゾロンを減少。
ケース4
70歳女性 右下肢の創傷と蜂窩織炎。10日前に車椅子に下肢をぶつける外傷。
治療経過: 来院前 セファレクシン500mg 1日3回のコースを2回 →シプロフソキサシン500mg1日3回、 来院後クリンダマイシン300mg 1日3回、デブリードメント
培養結果:MRSA、緑膿菌
生検は患者の希望で無し。
プレドニゾロン10mg 1日1回で創傷改善。プレドニゾロン15mg 1日1回→プレドニゾロン20mg 1日1回。創傷は2ヶ月で治癒。プレドニゾロンは治癒後減量。
ケース5
68歳 女性 左足のすねに創傷。5ヶ月前にドアに脚をぶつける外傷。クリニック来院前は、リンパ浮腫と診断され、全身麻酔でのデブリ、陰圧吸引を2ヶ月で、治癒傾向なし。レントゲンで骨髄炎なし。ウナブートを7日間使用。7日目に膿疱がみられ、14日目に紫色の辺縁がみられる。プレドニゾロン20mg 1日1回。創傷の悪化が見られたため、7週間後メトトレキサート 5mg 週に1回を追加。その後6週間で治癒。治癒後、プレドニゾロンとメトトレキサートを徐々に減量。
参照:
Philip P. Paprone, BS; Philip W. paparone, DO; Pamela Paparone, MSN, APN, FACCWS. "Post-traumatic Pyoderma Gangrenosum." WOUNDS. HMP Communications, 15 Apr. 2009.